とらじぇでぃが色々書くやつ

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主にVTuberの記事を投稿中。

人狼ジャッジメントでジェシカばっかり使ってた話

 

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この子が「ジェシカ」です

一時期、「人狼ジャッジメント」にハマっていたことがあります。友だちの影響で始めたのですが、結構面白くて、特に通学中はずっとやっていました。一試合30分くらいなので、長い通学時間の暇つぶしにはちょうど良かったんです。

人狼ジャッジメントスマホアプリです。LINE感覚で人狼ができます。

youtu.be

このゲームでモノを言うのはテキストを打つ速さです。打つのが遅い人は同時に発言数も少なくなりますから、疑われやすいのです。「寡黙は情報を落とさない」は耳にタコができるくらい聞いたセリフでした。幸い、私は打つのが速いほうでしたから、人狼ジャッジメントは向いていました。

ゲームの進行としてはある種テンプレ的な流れがあります。占い師COや霊能COで、処刑対象を決定する権限を持つ"進行役"を作る、とか。私が始めたころには既にそのテンプレ的な流れが決まっていたので、まずはそれを覚えるのが大変でした。しかし覚えてしまえば流れ作業なので、普通に人狼を遊ぶのに比べると大変に楽です。

この人狼ジャッジメントの大きな特徴の一つは、ユーザー名が見えないことです。他のスマホアプリに「人狼殺」というものがありますが、人狼殺ではユーザー名が最初から見えます(動画の24秒くらい参照)。

youtu.be

一方、人狼ジャッジメントでは、相手の名前はゲーム終了時まで分かりません。では互いにどう呼び合うかというと、あらかじめ与えられたキャラクターの名前を使うんですね。

werewolf-judgement.playing.wiki

中の人がどんな名前でも、「ゲイル」「サンドラ」「メアリー」みたいにそのキャラの名前で呼び合います。なので、慣れていないうちは顔と名前が一致せず反応が遅れてしまう、なんてこともよくありました。

私は男ですが、どんなゲームでも使うのは女の子です。グラブルでも女の子、シャドバでもなるべく女アバターマビノギでも女の子、あつ森でもキャラは女の子の姿だし*1Twitterでも少女アイコンです。男の子を使ってたのは小学生の頃のポケモンダイパくらいな気がします。

なので、私は人狼ジャッジメントでも女の子を使いました。最初はメアリーを使っていました。が、なんかしっくりこないのでやめました。

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メアリー。おしとやかな感じがする。

その次に選んだのがジェシカです。

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ジェシカの別バージョン。

かなりの人気キャラなんですが、私も彼女のかわいさに釣られてしまいました。これが結構しっくり来て、それからしばらくは、ジェシカを使っていました。

何がいいかって——気持ち悪いのは承知で言うんですが——みんながちやほやしてくれるんです。「は?」「気持ちわるっ」「てかそんなことある?」って思うじゃないですか。でもね、メアリーのときには全然見逃してくれなかった言い間違い(タイプミス)とか、反応の遅れとかも、ジェシカだと「仕方ないねー」みたいな感じでみんな許してくれるんですよ。メアリーもジェシカも中身は全く同じ、おっさん予備軍の大学生です。なのに、あからさまに扱いが違う。これは明らかに容姿が効いてます。違いは容姿(と名前)しかないのですから。

キズナアイは知っていますか? バーチャルユーチューバーのキズナアイです。ご存じない方も多いと思うのですが、彼女は過去、四人になっていたことがあります*2。そう、分裂したのです。およそ昨年のことですが、その分裂に関して大論争が発生しました。陣営を大きく分けると、分裂を認めない派、認める派の二つです。私はそれに関して、過去に記事を書いたことがあります。

tragedy.hatenablog.com

 タイトルにもありますが、ここで私はファンとクリエイターという二項対立を勝手に作りました。ファンは、キズナアイの分裂に否定的です。なぜなら、キズナアイは唯一無二の存在だと感じるからです。同じ体が複数存在し、それぞれに違う人間が割り当てられているのは自身の直観に反するのです。一方、クリエイターはキズナアイの分裂に寛容です。なぜなら、大まかに言えば、分裂という冒険は「バーチャル」の発展に寄与すると思えるからです。

私はといえば、あまりその「バーチャル」に馴染みが無かったので、クリエイターの発想には至りませんでした。むしろ、ファンのその反発の感情を大事にしたいと思ったのです。

しかし、バーチャルとはなんなのでしょう。私は本当にバーチャルに馴染みが無いのでしょうか……。

そう思った時、人狼ジャッジメントの経験に思い至りました。私がずっとジェシカを使っていたあの体験は、まさしくバーチャルなのでは……!?

というのは、長い間ジェシカを使っているうちに、私はジェシカと同一化してしまったようなのです。人狼ジャッジメントではキャラの名前で呼び合うと言いましたが、そのため同一のキャラが同じゲーム(部屋と呼びます)に存在することはできません。「ジェシカA」「ジェシカB」とかはあり得ないんですね。同じキャラがいたら、呼び合うとき混乱しますから。なので、私がジェシカを使っているときは、私だけがジェシカです。他にジェシカはいません。この環境こそが、同一化を促進します。

私が同一化を強く意識したのは、どうしても参加したい面白そうなルールの部屋を見つけた時です。入ろうとしたら、ジェシカが既に使われていました。いつもなら引き返すのですが、ルールの魅力と天秤にかけ、別のキャラを選択することにします。「サンドラ」はジェシカの姉妹とか双子とか言われているキャラですが、仕方なくそのサンドラを選択しました。

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サンドラ。今見るとこっちのほうが好きかも。

ゲームを開始すると、まず自分がサンドラであることにぎょっとします。いつもジェシカであるはずの場所にサンドラがいるので、びっくりしちゃうんですね。

でもさらにぎょっとしたのは、ジェシカが自分の意思とは無関係に喋っていることです! 他のジェシカを見るのはなんだか違和感を覚えます。いえ、もちろん私でない人が使っているジェシカも色があっていいんですが、しかし自分がもう一人いるように感じてしまうのです。これはYouTubeでゲーム実況を見ていてもそうでした。他人のジェシカに違和感があってしょうがないのです。他のゲームではこんな風に感じたことはありません。私はニーアオートマタがめちゃくちゃ好きなのですが、だからといって実況者がニーアオートマタで2Bを操作していても、違和感を覚えたりしません。2Bは元からこちらの意思とは無関係に喋るからです。ではTwitterアイコンならどうでしょう。私は今マビノギの「フレッタ」というキャラの立ち絵を勝手に使っているんですが、もし同じアイコンの方を見かけたとしても、別になんにも思わないでしょう。私はTwitterアイコンのキャラと自分を同一視していないし、フォロワーも私とアイコンを同一視していないからです。

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フレッタ。サンドラと雰囲気が似ている……性癖がばれる……

なので、この違和感は人狼ジャッジメントに特有な気がします。私はジェシカの皮を被って喋ります。ですが、思うにそれより重要なのは、他人から自分がどう扱われるかでしょう。私がジェシカであるとき、他人は私を「ジェシカ」と呼ぶのです。他者は鏡だとよく言われますが、「私=ジェシカ」の図式は他人を介して跳ね返ってきて、その暗示をさらに強めていきます。そしてジェシカは一つの空間に一人だけなので、それも跳ね返りの効果を促進させるのです。

だから、私が渋々サンドラを選択したゲームで、「サンドラ」と呼ばれることにも違和感がありました。「私=ジェシカ」が強まっていたので、サンドラに切り替えるにも苦労があります。それに何より、私はサンドラであるにも関わらず、「ジェシカ」という呼びかけに反応してしまうのです。

しかも、興味深いのは、他人のジェシカになんだか腹が立ってくることです。自分でもあり得ないと思うのですが、他人がジェシカで喋っていると、なんというか、「ジェシカはそんなこと言うか?」といった感情が頭をもたげるのです。これは厄介オタクそのもの! 書きながら確信しましたが、これがいわゆる「解釈違い」なんじゃないでしょうか。私はオタクになりきれてないオタクなので概念がよく分かっていないのですが、たぶんそうだと思います。だとしたら、解釈違いの基盤は、「同一化」にあるのでしょうか? つまり自他境界の薄れ? あのジェシカは私のジェシカではないのに、ジェシカという容姿が私に結びついてしまっている。ジェシカが突拍子もないことを言うと、自分のプライドが傷つけられたような気がしてくる。なんて馬鹿なんでしょう、しかし感情の問題なのでこれ自体はどうしようもありません。それを表に出さないように——せめて他のジェシカを傷つけないように——するだけです。

ここまで話した「バーチャルな」現象は、たとえばトーマスなどの男キャラでは起こらなかったことでしょう。そしてまたそれは、メアリーでも起こらなかった。私にとっては、ジェシカに親和性があったのです。

withnews.jp

これは新聞記者さんがVRに触れた経験を記したレポートです。筆者は初音ミクの姿になった感想を、端的にこう表現します。

おじさん、心の中に女の子がいたんだよ。それもとびっきりの美少女が……

女の子に"なった"のではないのです。女の子は、"既に"筆者の心の中にいました。

これを読んだときは感心するだけでした。しかし、今人狼ジャッジメントの記憶を振り返ると、似たような経験をしていたことに思い当たります。すなわち、ジェシカへの同一化は、ただ単に、私が長い間使っていたから起こったのでは無く、起こるべくして起こったのではないでしょうか。引用部分を借りて言い換えれば、私の心にはジェシカがいたのです。

ごく普通に、RPも意識しないで、ただ文字を打ち込んでいるだけなのに、本当に女の子だと思って接してもらうというのは、なんというか、満たされるような感じがします。先述したクリエイター側の人たちは、概観したところ、VRchatの住人であることが多かったです。VRchatというのは、3Dアバターを身にまとい、VR世界の散歩や他のユーザーとの交流を楽しむアプリのことですが、そのプレイヤーたちが感じているのは、まさに私が感じたような感覚なのでしょう。

vrchat.com

振り返ると、バーチャルな体験って意外とすぐ傍にあるのかな、と思ったりしました。

なんか、人狼ジャッジメント久しぶりにやりたくなってきたな。でも、やり方忘れてるからな。コテンパンにされそう。まずは初心者部屋からだな……。

 

 

*1:性別は男ですけれども

*2:今は事情が異なります。詳しくはキズナアイとは (キズナアイとは) [単語記事] - ニコニコ大百科などを参照ください。